救急救命士の業務のあり方等に関する検討会報告書(平成22年4月28日)
1.はじめに
・我が国の病院前救護体制の充実を目指して、平成3年に救急救命士制度が創設され、まもなく20年目を迎えようとしている。2.救急救命士の処置範囲の拡大の検討について
・研究班においては、救急救命士の処置範囲の拡大の検討対象とすべき行為に関して、次の指標を用いて整理が行われた。
(2) 診断の確実性と緊急度が高いものであること
(3) 国際蘇生連絡協議会のガイドラインがあるものは、クラスI(実施すべき:利益>>>リスク)又はクラスIIa(実施は妥当:利益>リスク)であること
(4) 迅速な搬送を妨げないこと
(5) 処置が単純明瞭でプロトコール化できること
(2) 心電図で所見が明らかな急性冠症候群に対するアスピリン経口投与
(3) アナフィラキシーに対するアドレナリン(エピネフリン)投与3.血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与について
(1)研究班での検討の概要
[2] 抗糖尿病薬(血糖降下剤又はインスリン自己注射)による治療歴があること
[3] 病歴により、低血糖発作が疑われること4.重症喘息患者に対する吸入β刺激薬の使用について
(1)研究班での検討の概要
[2] 喘鳴を伴う呼吸困難、陥没呼吸を認めること
[3] SpO2値が大気下で95%以下であること
[4] 救急隊現着時より20分以内にSABAの吸入がないこと
※[1]~[3]は必須であるが、[4]は必須ではない。5.心肺機能停止前の静脈路確保と輸液の実施について
(1)研究班での検討の概要6.実証研究について
・実証研究の実施体制については、厚生労働省と総務省消防庁が協力し、研究班が中心となって、医療関係者と消防関係者が共同で実証研究を行う体制を構築する必要がある。その際、総務省消防庁の救急業務高度化推進検討会との連携が図られるようにする必要がある。7.おわりに
・本検討会では、傷病者の救命率を向上させ、後遺症を軽減させる等の観点から、救急救命士の処置範囲の拡大について検討を行ってきた。「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」メンバー
(委員)
石井 正三 (社)日本医師会常任理事
葛西 龍樹 福島県立医科大学地域・家庭医療部教授
郡山 一明 救急振興財団救急救命九州研修所教授
佐々木 靖 札幌市消防局救急課長
★島崎 修次 杏林大学救急医学教授
杉本 壽 星ヶ丘厚生年金病院病院長
永池 京子 (社)日本看護協会常任理事
野口 英一 東京消防庁救急部長
野口 宏 藤田保健衛生大学医学部救急科教授
樋口 範雄 東京大学法学部教授
前野 一雄 読売新聞東京本社編集委員
(参考人)
中川 隆 愛知医科大学病院救命救急科教授
松本 尚 日本医科大学救急医学講座准教授
(オブザーバー)
総務省消防庁救急企画室
海上保安庁警備救難部救難課
(敬称略 五十音順、★:座長)