平成23年~ 厚生労働科学研究費補助金 地域医療基盤開発推進研究事業
救急救命士の処置範囲に係る研究

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【Q&A】

新しい処置に関して、これまでに、いろいろな機会を通じて当研究班に寄せられた要望や質問(平成26年中)について、次のとおりお答えします。

(処置)
① 心原性ショックに対しても心停止前輸液が実施できれば、心停止に陥った際に速やかにアドレナリンを投与できる。心原性ショックについても、心停止前輸液の対象としてはどうかと思うが、どうか?

A. 心原性ショックについては、実証研究の結果を踏まえて、迅速な搬送をより優先した方がよいと考えています。

② 血糖測定により病院選定がしやすくなったと感じている。新しい処置の講習を受けずとも、救急救命士には血糖測定を可能としてほしい。それが無理であれば、血糖測定に限定した、短期間講習で実施可能としてほしいが、どうか?

A. 観血的な処置であり、一定の講習が必要と考えています。血糖測定に限定した短期間講習もあってもよいかもしれませんが、救急救命士の資格が複雑になること(挿管救命士、薬剤救命士、血糖測定救命士、ブドウ糖救命士などと種別が増え、複雑化すること)を懸念し、血糖測定、ブドウ糖投与およびショック等に対する輸液の3つはセットとして認定される仕組みになっているものと理解しています。

③ 血糖測定について、具体的指示下ではなく、包括指示下で実施できるようにできないか?

A. 血糖測定については、法的に特定行為として位置づけられておらず、もとより包括的指示下での実施であると理解しています。

④ 意識障害の傷病者については、糖尿病の有無にかかわらず血糖測定が出来るようにしてほしいが、どうか?

A. MC協議会や消防本部の責任の下、MC協議会や消防本部の判断で、糖尿病の有無にかかわらず血糖測定の適応とすることが可能であると理解しています。実際に、糖尿病の有無にかかわらず血糖測定の対象としているMC協議会や消防本部があると聞いています。

⑤ 低血糖の改善のためにブドウ糖を投与することで、その後のコントロール不良を招くような事態があることを懸念し、ブドウ糖の投与を慎重に考えている救命士がいる。処置の実施に問題はないか?

A. 一般に、短時間であれば、高血糖よりも低血糖の方が、傷病者に対する危害が大きいのではないかと思われますが、いずれにしても、ブドウ糖の投与によりその後の血糖コントロールの悪化が特に懸念される傷病者の場合には、ブドウ糖投与の前のオンラインでの指示要請の際に、医師に助言を求めるのがよいかもしれません。

(研修体制)
① 運用救急救命士全員に処置拡大が実施できるように、新しい処置の講習の充実、強化を図っていただきたい。

A. 各消防本部、各MC協議会、その他、救急救命士の教育関係機関での新しい処置の講習体制が強化されるように、研究班としても、このHPを通じるなどして、引き続き情報発信等に努めていきたいと考えています。

② 地域単位での開催は、講師・会場の確保等,負担が大きいため、新しい処置の講習を県、県消防学校で実施していただきたい。

A. 地域によっては、講師等の確保が困難であることは承知しています。救急振興財団等で、全国の消防本部の職員である救急救命士を対象に、講習会を実施していますので、それらを活用されるのも良いかもしれません。

③ 救急振興財団の新しい処置の講習について、各県、各消防本部への定員の割り当てが少なく、講習会数、定員の拡充を図っていただきたい。
A. 救急振興財団の新しい処置の講習について、平成27年度の募集は締め切られたようですが、定員数にわずかですが余裕があり、追加応募も可能と聞いています。救急振興財団に問い合わせをされてはいかがでしょうか。

④ 今回以降、更なる処置拡大が行われるのであれば、現場活動している救急救命士に対する再教育については、救急振興財団、政令指定都市の救急研修所においては実施していただきたい。都道府県や地域メディカルコントロール協議会での実施は、教育の質にばらつきが生じ好ましくない。

A. そのような声があることを、厚生労働省や消防庁の担当官に伝えさせていただいます。

⑤ 新しい処置の講習を、新規の救急救命士養成課程に組込んでいただきたい。

A. 平成27年度の救急救命士の国家試験を受験する受験者については、養成課程において新しい処置について学ぶものと理解しています。

⑥ 各MC圏域でばらばらに資料を作成すると講習内容に統一性がなくなるため、講義資料,試験内容等の統一を図ってほしい。

A. 一定程度の講習資料の共通化のために、当研究班としても、これまで標準テキストの作成などに協力をしてきたところです。とはいえ、様々な主体による講習の実施や資料の作成が切磋琢磨につながり、全体としてより良い講習体制につながるのではないかとも考えています。

⑦ 講師(医師等)派遣及び資機材(高度シュミレーション訓練人形)のレンタル、無償貸与が可能な環境整備を進めてほしい。

A. 経費の負担が困難である地域があることは承知していますが当研究班での対応は困難です。そのような要望があることを、厚生労働省や消防庁の担当官に伝えさせていただいます。

(広報)
① 新しい処置について住民及び患者に対するPR用のポスター等を作製し配布願いたい。普及に繋がる掲示物の作成を要望する。

A. 当HPにいくつかの例を掲載しています。必要に応じてご参考いただきますようお願いします。

② 医師会、医療機関、住民等への広報について、助言してほしい。

A. 当HPに先進的な取り組みの例をご紹介しています。必要に応じてご参考いただきますようお願いします。

(統計・情報)
① 心肺停止前の重度傷病者に対する処置範囲の拡大がなされたことにより、救命率の向上や後遺症の軽減に反映するものと期待している。全国的な処置の実施状況、効果についての情報を、救急統計(救急救助の現況)などに掲載いただきたい。

A.消防庁等で実施された新しい処置の実施状況に関する調査結果などについて、本HPを通じても紹介していくことを予定しています。

② 他県では、どのようなプロトコルを作成し、運用しているのか知ることのできる体制を確保してほしい。

A. 了解を得られた地域のプロトコルなどを、本HPを通じても紹介していく予定としています。

(地域格差)
① 今回のアンケート調査で「地域ごとに、新しい処置の実施を判断できる」、「地域の判断で、新しい処置をしない選択も可能である」ことを知ったが、各MC協議会、消防本部で「する・しない」を決めるよりも、国で統一して決めてほしい。

A. そのような声があることを、厚生労働省や消防庁の担当官に伝えさせていただいます。

② 処置拡大は運用のレベルになるとMCや消防機関の資源や財政力に左右され、地域間格差が生じ、相対的にレベルの低い地域が生まれる。傷病者の予後に大きく影響する処置であれば、地域差が生じないように国レベルで均一にしていく必要があるのではないか。

A. そのような声があることを、厚生労働省や消防庁の担当官に伝えさせていただいます。

(MC体制)
① MC協議会は、書類上ではなく、実施に対応できる24時間体制で指示、助言を得られる体制整備を進めるべきではないか?

A. MC協議会、消防機関、都道府県には、そのような役割が求められていると考えています。各機関での改善の取り組みが進むことを期待しています。

② 指示要請した病院内の連絡体制の不備によって医師に連絡がつくまでの時間が長くなる場合がある。医師側、医療機関側の検証ができる体制も必要ではないか。

A. ご指摘のとおり、MC協議会には、救急救命士の処置の実施状況のみならず、医師や医療機関の指示の実施状況についても検証する役割があると考えています。
通知「救急救命士の心肺機能停止前の重度傷病者に対する静脈路確保及び輸液、血糖測定並びに低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与の実施に係るメディカルコントロール体制の充実強化について」(平成26年1月31日消防救第13号・医政指発0131第3号消防庁救急企画室長・厚生労働省医政局指導課長通知)の別添2を活用するなどして、別添2の4-4「MC指示要請」に記載の項目の記録を取ることで、まずは実施状況を明らかにする取り組みなどを検討されてはいかがでしょうか。

(事故防止、危機管理、その他)
① 新しい処置に係る有害事例について共有化できる仕組みを考えてほしい。有害事象に関わる、消防機関向けの事故対応マニュアルなどについて、整備いただけないか。

A. 当研究班に、有害事例について情報提供をいただければ、匿名化した上で、HPに情報提供させていただきます。それらの事例とその対応が集積されれば、事故対応マニュアルなどの整備に結びついていくと考えられます。

② AHA G2010に準ずる心停止前後の抗不整脈療法と、骨髄路確保について、処置の拡大を進めてほしい。

A. 今後の処置拡大の進め方について検討を行っているところです。今後、それらがまとまれば、HPにて公表する予定としています。

③ 医師からの具体的指示が、形式的であり、実質的な役割が不明確である。新しい処置を増やすよりも、まずは今ある特定行為を包括的指示で行えるようにしていただきたい。

A. 心肺停止に対する特定行為について、オンラインでの事前指示のメリット、デメリットを踏まえた有用性についての検討が必要と考えています。各MC協議会、各消防本部でも、議論が広まることを期待しています。

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